日々早々エッセー
バックナンバー集（2021年 7-12月分）
2021年上期の各月バックナンバー : 7月 8月 9月 10月 11月 12月
＜＜2021年：7-12月分 タイトル＞＞
12/27 雪国育ち 12/24 不祥事が起きたら 12/17 遺跡はなぜ埋もれる 12/10 中国の電力不足 12/08 牛になる 12/03
原始の本能 12/02 文語調 11/12 寂聴さんとマララさん 11/10 アイドル人気 11/05 地に足をつけて 10/28 天国ではない
10/27 黄葉を楽しむ 10/22 制限解除 10/15 呑める口 10/08 ドボン 10/01 敗因 09/17 母集団の問題 09/10
ヒーローインタビュー 09/02 ノンアルコール 08/20 死にゃあしない 08/16 因果律と予定説と量子論 08/13 科学と宗教 08/06
変な声 09/03 がっかりスポット 07/30 付和雷同 07/16 50代問題 07/09 今年の梅雨は 07/02 時のたつのは 07/01 野生との共生
2021年12月27日
雪国育ち
東京で雪が降ると、電車は止まるし雪道で滑って転倒する人が続出するなど大混乱をきたすが、雪国では人々が雪への備えをしている所為もあって余程の大雪でもない限りは、都会程の大騒ぎになることは少ない。青森空港にはホワイトインパルスという名の除雪隊がおり、どんな大雪が降っても東京ドーム12個分の広さの空港を40分で除雪してしまうから、国内屈指の積雪量がある青森空港だが、今までに降雪で空港が閉鎖されたことはないという。成田や羽田で青森並の降雪があれば大混乱は間違いないだろうに。
数年前の冬、函館旅行をした時、五稜郭に行こうとして市電から降りて、道を尋ねたら、「私の家もそちらの方ですから、ついてきてくだされば」というので、雪道を後ろに付いて歩いたのだが、随分とご年配に見えたそのご婦人は、滑りそうな雪道を、スタスタと歩いていくではないか――。昔、雪国で暮らしたこともあるタカさんだが、もう何十年も雪道歩きをしていないだけに、必死について行こうとするのだが、たちまちの内に離されてしまい、申し訳ないので「先に行ってください」とギブアップしたこともあった。スケート選手の多くが、雪国出身であるのもこの雪道歩きのバランス感覚となにか関係がありそうだ。
年末に向けて日本列島に、強い寒気が流れ込んできていて、日本海側（昔は「裏日本」といっていたが、クレームがついて「日本海側」と言うようになったらしい）では、広い範囲で雪が続いているという。南関東では、雪の気配はないが、西日本の日本海側では、既に一気に雪の積もった所もあるというし、この強い冬型の気圧配置は年末まで続くと予測されているから、各地では引き続き大雪に警戒が必要だとか。
まあ、タカさんの住む地域では、まさか年末に、大雪ということもないとは思うが、舐めてかかると、もしもの積もったら、身動きがとれなくなるかもしれない。せめて長靴と雪かきスコップ位は、倉庫から引っ張り出しておいた方がよいだろうか―――。
さて、今年の「日々早々」も、今日で最終稿となります。令和四年の「日々早々」初稿は、1月7日号の金曜日シリーズからの予定です。
三年目に入ろうとしているコロナ禍もあって、皆様も何かと大変な年越しを過ごされていると思いますが、なにとぞ良いお年をお迎えください。
タカさん拝
（12/26/21 10:00pm）
2021年12月24日
不祥事が起きたら
アメリカの危機管理セミナーで聞いた不祥事の際の対処マニュアルを思い出す。というのも、日本では、こんな基本ができていない政治家、企業、個人が多すぎるように思えるからだ。
不祥事を起こしてしまった時の、対処の仕方が悪かったために、取り返しがつかなくなってしまうこともあれば、逆に、それを切っ掛けに立ち直り、以前より評価が高くなる――等と言うケースさえあるのだ。企業にしろ、政治家にしろ、あるいは個人にしろ、対処の基本は同じだ。
不祥事が発覚したら、まずやることは「事実の認定」である。ここで、変にウソをついたり隠したりすると、後でばれた時に（ウソはバレるものなのだ）、もう取り返しのつかないことになってしまう。但し、（やってもいないことは明確に否定し）その時点でははっきりしないことは、何時何時までに公表する旨を告げ、その期日をしっかりと守ることが大切だ。（田中角栄は「後日明らかにする」と大見得を切りながら、逃げ切りを図ったことで終生、悪評を残した）
「公表と謝罪」も重要だ。グタグタ言い訳せず真摯に謝罪することが大事だ。「捜査中のことなので」とか「責任者が不在で」と逃げるのが、最近の常套手段だが、この手の与える印象は、「逃げてばかりで、反省の色が見えない！」と非常に悪くなる。政治家や企業などでは、この時の、悪印象がその後の致命傷にもなりかねない。
「責任と処分の明確化」も必須だ。度重なる、日大の不祥事でも、責任が誰にあるのかを全く明確にせず、アメフト事件の時も、結局形だけの処分をしたものの、彼等を全員直ぐに復帰させるなどしたことで、今回の裏金騒動で大学全体に致命的な傷を負わせることに繋がってしまった。「再発防止策の策定、公表」そしてそれらの「信頼回復策の誠実な実行と実行状況の公表」も必要だ。これらの事の全部ができれば、最悪の不祥事でも、それから受けるダメージを軽減できる可能性がある。
ところで話は一転するが、不祥事といえば、今相撲界で一人勝ちの、横綱照ノ富士に、対抗しうる素材だとタカさんが思う「朝の山」だが、コロナ下での連日のバー通いで、一年間の謹慎、休場処分中だが―――賭博や八百長という訳でもないし、若いあんちゃん力士が、悪い記者に誘われて連日飲み歩いたというだけなら―――そろそろ許してやってはどうだろうか――――。
タカさんは酒飲みに対して寛容過ぎると叱られるかもしれないが―――。
(12/23/21 10:00pm)
2021年12月22日
熱燗で一杯
イスラム圏の国のホテルの朝食ビュッフェには、西欧のホテルのビュッフェ同様、豊富な野菜や、果物、パン、様々な玉子料理に各種の飲物などが並べられているのだが、滞在が何日も続くとこれが嫌になってくることが多い。何も味噌汁や漬物、納豆が欲しいという訳ではなく、ベーコンだとか、ソーセージといった西洋式の朝食では定番の品が中東にはなく、パスタラミという牛肉で作ったソーセージとか、チキンソーセージが申し訳程度にあるだけで、なんだか物足りなくなってしまうのだ。
パスタラミサンドイッチは、ラスベガスに行った時などには、よく食べたものだが、どうも朝食に食べるものではないし、チキンソーセージに至っては、パサパサで、魚肉ソーセージの方がまだましだと思わせる。
イスラム圏でなぜ豚肉が禁じられているかといえば、それはイスラムの聖典であるコーランに「豚肉を食べてはいかんぞよ！」と書いてあるからなのだが、イスラム教が始まって以来、1400年余りの間、世界人口の3割近い人たちがこの「豚肉をたべてはいかんぞよ」という戒律を守ってきたというのだから、たいしたものだ。
明治以前には豚肉など食べなかったのに、今やトンカツ、ブタの生姜焼き、豚汁に、豚角煮などなど世界でも有数の豚肉料理のレパートリーを持つようになった日本からの旅行者にとってウィンナーソーセージすらない国での、朝食は何ともせつないところがある。
でも、なぜアラーの神は「豚肉を食べてはいかんぞよ！」などといいだしたのだろうかというと、諸説あるが、イスラム教の源流ともいわれるユダヤ教では、（ブタはネズミと同じように）牛や羊、のように反芻をしないから、不浄な生き物と考えられているから――という説があるとも聞いたが―――なぜ反芻をしない動物は不浄なのかは聞きそびれた。
そうそう、イスラムは酒を禁じているが、ユダヤ教もキリスト教も禁じてはいない。（クリスチャンなどはキリストの血だと称して、聖体拝領の儀式では赤ワインを使っている）
なぜ、イスラムだけが酒を禁じるのか―――これもある説では、イスラムの起源の地であるアラビアはめちゃくちゃ暑いから、そんな所で大酒を飲めば、たちまち卒倒して死んでしまうので、それを案じたアラーが禁酒を命じたのだと聞いたことがあったが―――。
となると、寒さが厳しくなってきた今日この頃、日本人が、熱燗で一杯やる位は、アラーも許してくれるのではないだろうか。
(12/21/21 10:00pm)
2021年12月17日
遺跡はなぜ埋もれる
三内丸山（縄文遺跡）や、吉野ケ里（弥生遺跡）などを見に行くと住居跡や土器などが地表から深さ3メートル位の所から発掘されているのを見る。洪水による土砂の流入とか火山灰などの堆積とは縁遠い地域なのに―――と首を傾げることが多いが、堆積原因の殆どが、枯草や落ち葉を地中生物、特にミミズが分解しそのフンが積もり積もったものだという。
そういえば進化論で有名なダーウィンは、ビーグル号での航海後の半生を、田舎の屋敷で暮らしたが（ダーウィン家も金持ちだったが、奥さんも、陶器の名門ウェッジウッド家の出だった）その牧草地の一角でミミズの研究を行い、ミミズが年間6mmもの土壌を堆積させている―――という研究結果を発表している。（参照：「ダーウィンのミミズの研究」）
アイルランド環境省も、ミミズ等の、地中の微小生物生態系が土壌の肥沃化などで、同国に年間4200億円に上る利益をもたらしている―――との研究発表をしているから、日本でもミミズなどの、土壌微生物のもたらす利益は、実は莫大な額に上るのだろう。
今や、未舗装の道路を見るのが珍しいほどに、道路と言う道路は舗装され、土手と言う土手には護岸の為のコンクリートが貼りつけられていて、確かに災害防止には役だってはいるのだろうが、SDGSが叫ばれる世の中に逆行するかのように、自然の恵みであるミミズのもたらす豊かな土壌が失われているのは、大きな国益の損失になっているのかもしれない。
そういえば、佐渡では、田んぼを掘り起こさず、冬の間も水を張っていると、糸ミミズなどが発生、それを餌にするドジョウやメダカなどが育ち、さらにそれを求めて丹頂鶴やトキなどが田んぼに集まってくるという自然農法（不耕起栽培法）を行い、日本の原風景を取り戻しつつあるという話も聞く。
あの懐かしい、かつての日本の里山の風景は、実はミミズや糸ミミズが支えていたといま気がついても、もう遅いのだろうか。
昔は釣り好きの人は、釣り餌用に、庭に古むしろなどを敷いてその上から、米のとぎ汁を撒いたりしてミミズを育てたりしたものだし、金魚のエサ用にと、水瓶に水をはって糸ミミズを湧かしたりしていたものだが、昨今はミミズは、もっぱらアマゾンで取り寄せるそうだから―――これでは中々SDGSという訳にはいかないと思う。
（12/16/21 10:00pm S.T.）
2021年12月10日
中国の電力不足
寒さが厳しくなってきている最中、中国では、電力不足が深刻になってきており、国民からの反発を恐れる中国政府は、価格の高騰は抑えられないにせよ、少なくとも量的には家庭用電力を絞る訳にもいかないから、その分、産業用電力を絞っている為に、多くの工場が操業を止めざるを得なくなっており、深刻な景気の足かせとなってきている。
この石炭不足の主要因は、中国の電力源である石炭の不足である。中国の電源構成比率では、石炭火力が全体の56.58%を占めており、グレタさんが「高い！」と非難する日本の約倍の比率であるが、折からの二酸化炭素排出削減の世界的な熱狂を受けて、習近平が「2060年までに実質カーボン排出ゼロを目指す！」などというできもしない目標を宣言してしまったこともあって、中国国内での石炭生産が急停止状態になった上、新型コロナの起源に関する調査を要求したからケシカラヌと、それまでのまで最大の石炭輸入先であった豪州からの輸入を禁止した結果、大幅な石炭不足に陥っている為だ（2020年6月までは年間約1億2000万トンあった、豪州からの石炭輸入量はそれ以降ゼロになっている）
気に食わないからと輸入先を嫌がらせるために輸入をピタリと止め、グレタさんたちのご機嫌取りに、国内の石炭生産も極端に絞る、等という無茶ができるのも中国が習近平の独裁国家だからこそできる訳で、なんだかあの毛沢東が推し進め3600万人もの餓死者を出したという、無茶苦茶な「大躍進運動」を彷彿とさせる。
経済が低迷しはじめて、さすがの習近平も多少慌て始めているのか、国内石炭の増産指令を出したり、インドネシアからの輸入を増やそうとしているようだが、その実効は上がっておらず、かといって北京五輪への政治的ボイコットを打ち出した豪州に、今更頭を下げる訳にも行かないとなると―――頭の痛いことだろう。
こんな時、国内の不満をそらす手段としては、国民の目をそらすことだから、台湾有事や尖閣問題がますます切迫してくる可能性が考えられる。
対中姿勢は相変らず曖昧な岸田首相、党内でも最親中派といわれる林外相で、これからの対中難局を乗り切れるのだろうか―――。
(12/09/21 10:00pm)
2021年12月8日
牛になる
チーターやライオンなどの肉食動物は、スマートでデブのチーターやデブのライオンは、いないが、草しか食べない牛や、笹や竹しかたべないパンダが太っているのは何故だろう。
草食とは言え、肉食獣がうようよいるサバンナに住むガゼルなどは、素早く逃げないと食べられてしまうから走るために、スマートにならざるを得ないが、大きな群れで暮らしているバッファローや、天敵の少ない竹藪暮らしのパンダは日がな一日食べ続けていても、そう簡単には襲われないという安心感（？）から、太ってしまうのかも知れない。
肉類はもうたいして食べないというのに、コロナ禍を口実に運動もせずのべつ幕なしに口を動かしている人たちが、「野菜しか食べていないのに、全然体重が減らない！」なんて言っているのを聞くと、（自戒も込めて）「牛を思い出せ！」と言いたくもなる。
牛などの反芻動物が、日がな一日もぐもぐしているのは、反芻することで腸内細菌に草からタンパク質を作ってもらい、最後にはその腸内細菌ごと消化してしまうことで、ちゃんと体内にタンパク質や脂肪がたくわえられるから太れるのだが―――。
人間は反芻しているわけでもないし、腸も牛ほどには長くはないから、太るのはやはり運動不足が原因なのだろう。
子供の頃、食事の後でごろりと横になると、母親から「食べた後ですぐ横になるのはお行儀が悪いし、その内、牛になってしまうわよ！」ときつく言われたものだが、今の若い親たちは、そんなお作法や行儀を子供達に教えているのだろうか――。
タカさんも、歳の所為か、昔に比べれば食べる量は、減ってはいるものの、アルコールは週三回程度は摂取し、コロナ禍の所為にしたり、あるいは寒さの所為にして、散歩の機会も減りがちだ。「牛になる」というおそれがちょっとちらつく。
(12/07/21 10:00pm)
2021年12月3日
原始の本能
日本人の平均寿命は、現在男性81.64歳 女性87.74歳と6歳ほどの差がある。時代が移り変わろうが、国が異なろうが、女性の方が男性より長生きする――という事実に変わりはない。平均寿命の雌雄差は人間のみならず多くの動物に於いてみられるから、男女平等が叫ばれる昨今ではあるもののこれを「不公平だ！」と叫んでみても人類誕生の500万年前から変わらぬ生物学的宿命である以上解消しようがない。
なぜこのような性差が出てしまうのか、人類学上の知見が様々に言われているが、太古の時代から人類が共同体生活を営んで生活をしてきたことに大きな要因がある――という説が有力だ。
ヒト以外の動物は、出産が比較的軽く、生まれて来た仔は出生直後から歩いたり母親にしがみついたりできるが、脳が大きくひ弱なヒトの赤ん坊は、母親にしがみつくことさえできないし、歩きだすまで1年近くかかる。その間、ヒトは男女が手分けして食料確保をせねばならず「子供の面倒をみながら、木の実や根菜を採取するのは女性、狩りに出かけるのが男性」という役割分担が行われてきたという進化の歴史がある。
それ故に、女性は男たちが獲物をもって帰ってくるまでの数日間、数十日間を授乳を続け、生きのびるために脂肪を溜めやすい体質にならざるを得ず、男たちは数十日間、獲物を追いかける為の強靭な体力と筋力を発達させてきたのだという。出産、育児という難事に幾度も耐え、脂肪をため込みやすい体を作り育児をもこなす体力を得た女性の方が、筋肉質になった男性よりも長生き、というのも進化の結果だというのだが。
そういえば確かに思い当たる点もないではない。それは、女性達が好きなウィンドウショッピングだ。コロナ禍が一旦下火になってこの方、都内のデパートなどに押しかける女性達のニュースをよくみるが、あれは原始の時代の木の実や、根菜の採取をしていた女性たちの名残ではないだろうか。逆にウィンドウショッピングが好きだという男性は、ほとんどいないという事実は、やはり獲物を追うという目的を持ち行動し、獲物を得たら、ひもじい思いをしている女性や子供達の元へ一目散に戻ろうとする原始の男たちの本能が今も、残っているからではないだろうか。
散歩に出ようとするタカさんに、妻が「スーパーに寄って来て欲しい」ということがあるが、そういう時は買い物リストを書いて欲しいということにしていて、買い物リストにある物だけを買ったら、さっさとその場を去るのが普通で、店内で目的外の物をあれこれ見て回り、買って来る妻とは異なる。タカさんにも原始のオスの本能が残っているようだ。
(12/02/21 10:00pm)
2021年12月2日
文語調
203高地をめぐる激戦に勝利し、旅順軍港の攻略に成功した日本軍は、大連郊外の水師営においてロシア軍との停戦会見に臨んだ。日本代表は第三軍司令官・乃木希典大将、ロシア代表は旅順要塞司令官ステッセル中将であった。多くの犠牲を出しながらも大国ロシアに勝利したことで当時の日本は湧きたったというが、歌人佐々木信綱は、文部省の依頼を受け、会見の写真を見て即座に一遍の詞をつくったという。これが小学校唱歌にもなった「水師営の会見」である。
祖父がまだ学生だったというこんな古い話をタカさんが知っているのは、この歌が覚えやすい、文語調だったからだろう。「旅順開城約（やく）なりて、敵の将軍ステッセル乃木大将と会見の所はいずこ 水師営 庭に一本（ひともと）なつめの木弾丸あとも、いちぢるく くずれ残れる民屋（みんおく）に いまぞ相見る 二将軍」
文語調の文章が使われなくなって久しいが、今の若い人でも百人一首などでかろうじて分かるだろうし、樋口一葉や、森鴎外の「舞姫」などの明治初期の小説などでもおなじみがあるかもしれない。それにしても明治の人たちは歌や詩にかぎらず、手紙などの書き言葉は文語調、話し言葉は口語調と使い分けていたのだから、今と比べると日本語の能力は随分髙かったようだ。もっとも、短歌や俳句、人によっては漢詩などの詩歌をいまもかなりの人たちが作って楽しんでいることを思えば、日本人の詩の素養は、外国に比べて今も高いように思うが、やはり、その能力は文語調の書き言葉と四季のある日本の自然環境によるのかもしれない。
歌にしてもそうだ。歳の所為もあるかもしれないが、未だに歌詞を空で覚えていて歌えるのは島崎藤村作詞の「椰子の実」（名も知らぬ遠き島より流れ寄る椰子の実ひとつ―――）や、吉丸一昌作詞の「早春賦」（春は名のみの 風の寒さや 谷の鶯 歌は思へど 時にあらずと 声も立てず）であったり、文語調の小学校の校歌や「仰げば尊し」や「蛍の光」だったりする。中学や高校の校歌がうろ覚えなのは多分、口語調だったからだという気がしないではない。
英語でも例えばgood!よりたまにはfabulous！だとかmarvelous！などというちょっと言葉を使うと「あれ、こいつ日本人なのに結構英語を知っているなぁー」などと思われるかもしれない。（もっともこんな言葉を知らないアメリカ人も多いから要注意だが）
時々は文語調の挨拶状などを出してみると、少しは感心されるかもしれない。
(12/01/21 10:00pm)
2021年11月12日
寂聴さんとマララさん
当時13歳であったマララさんは、原理主義のイスラムが女性は教育を受けるべきではないと主張するなかで、学校に通い続け、同時にBBC放送などで女性の教育を受ける権利についての国際的な活動を始めていたが、彼女の主張は、イスラムの教えに反するとするイスラム原理主義タリバンの銃撃を頭部に受け生死の境をさまよった。病院の救急治療室に運ばれ、奇跡的に回復したが、その後も女性の教育の権利について積極的な啓蒙活動を続け、2014年、17歳の時に史上最年少でノーベル平和賞受賞した。
しかし、母国パキスタンでは、国民の多くはタリバンに対する恐怖心があって女性の教育の権利推進はそれほど進んではいないし、マララさん自身、身の危険があって母国での生活はできない状況で、今は英国に住んでいる状態だ。隣国アフガニスタンでは8月に、タリバンが政権を再奪取したような状況では彼女の帰国も当分は望み薄というべきなのだろう。
そんなマララさんだが、今や24歳となっているが、イギリスのバーミンガムの自宅で、同じくパキスタン出身で英国クリケット協会の幹部を務める青年と結婚したという。
同じ日のニュースが伝えるのは、あの恋多き女性、瀬戸内寂聴さんが99歳で亡くなったというニュースだ。彼女は、若き時代の結婚、出産、そして不倫により子供を捨てての出奔と離婚、作家としての活躍、出家してからの女性達に対する恋愛の勧めなどの説法等々の話題に事欠かない女性であったが、マララさんも寂聴さんも、リアルな人生を生き、時と共に数々の経験を重ねている女性であることを感じた。
午後、テレビを点けると「科捜研の女」の再放送が流れていた。沢口靖子が演じる科学捜査官を主人公にした警察ドラマで、通しで観たことはないが、結構人気のあるドラマらしく、かれこれ20年近くつづいているらしい。この「科捜研の女」（マリコというらしいが）独身なのか結婚しているのか、どんなところに住んでいるのか、ドラマの中で紹介されたことはないのではないだろうか。プライベートライフは勿論このドラマには不要だろうし、そもそも、20年近く続いているとなると設定上の初回はマリコが30代だったとしても、今は還暦近くになっているはずで、そうだとするとそろそろ定年のはずだが―――。
マララさんや、寂聴さんと違って、ドラマ上の存在である科捜研の女にはゴルゴ13やサザエさんと同じように、年齢なりに人生経験を経る、というプロセスがない事にあらためて気づかされた。
(11/12/21 10:00pm)
2021年11月10日
アイドル人気
将棋を知らないはずの妻が『藤井聡太君がおやつの時間に注文したのが不二家の「コロコロしばちゃん」ですって！』と飛んできた。史上最年少の三冠となった藤井聡太九段のことは、将棋はさっぱりのタカさんにとっても興味のある存在ではあるが、多分多くの、将棋を知らない人たちの為にだと思うが、毎回の対局の際に藤井九段が何を食べたか、おやつの時間には何を注文したかを報じている。
藤井九段以外の棋士や、囲碁の対局の記事では、そういった報道をみたことはないが、藤井九段の場合には、SNSでそれだけをフォローしているものもあったりするのだから、彼には間違いなくアイドル的な人気があるようだ。（野球を知らない人まで大谷翔平選手の一挙手一投足に熱狂しているのと同じかも）
実は妻が飛んできたのには訳がある。現在もう中学生になっている孫娘が幼稚園に通っていた時期、勤めに出ている娘に代わって、幼稚園のお迎えはジジババの受け持ちだった。幼稚園で孫娘をピックアップすると、その足で近くのショッピングモールに連れていって遊ばせたりしたものだったが、その時におやつにと彼女の大好きな不二家の「コロコロくまさん」というカップケーキを買ってあげたものだったのだ。思春期を迎えている彼女にとっては、そんな話は恥ずかしがるかもしれないが、タカさん夫婦にとっては実に懐かしい思い出のケーキなのだ。「コロコロしばちゃん」は、「コロコロくまさん」の姉妹品らしいが、藤井九段がおやつに食べたという記事以来、連日注文が殺到し売り切れる日もあるらしいから、彼のアイドル人気たるやたいしたものだ。
タカさんは、ジャニーズだとか、AKBだとかのアイドル人気は理解できない齢になっているが、アイドル人気に乗ったマーケティングの力というものは、大変なものだという。
さすがに妻もタカさんもわざわざ「コロコロしばちゃん」を買いにいったりはしないだろうとは思うが――大谷翔平選手がベンチで飲んでいる真っ赤なジュースが、アメリカでよく飲んでいた「クランベリージュース」だと知って、アマゾンで1ケース注文したことがあった。そう考えるとアイドル人気の持つ商品力の凄まじさに、実は自分も巻き込まれているのだと実感せざるを得ない。
(11/09/21 10:00pm)
2021年11月5日
地に足をつけて
命ある物を殺してはいけないと、キリスト教も仏教も教えているが、肉や穀物を食べず水だけを飲んでいたのでは人は生きてはいけない。キリスト教のいう原罪も、仏教の殺生戒も人にとっては大いなる矛盾を強いる無茶な教えともいえるのだが―――。
グラスゴーで開かれているCOP26で討議されている温室効果ガス排出削減目標設定も殺生戒に似たところを感じないではない。
昨今の地球温暖化は人類の排出する「温暖化ガスの所為であるから、それを止めよう」というのは、現在78憶人いる人類が生きていくためにはエネルギーが必要であるという現実に基づくなら、「命ある物を食べずに生きろ」と言っているのにも似ている。
確かに核融合を人類が行えるようになれば、あるいは宇宙ソーラー発電技術を獲得できるようになれば、二酸化炭素を発生させないエネルギーの確保が可能になるかもしれないが、いずれの技術もいまのところ「逃げ水」といわれているように、70年程前から「30年後には、いや50年後には実現する」といわれ続けているが、随分先のことになりそうだし、実現性に乏しいという説も根強い。
グラスゴーでは各国首脳が「2040年までには実質カーボンゼロを達成！」とか「2050年までには――」と大風呂敷をひろげ、「2060年までに――」という中国やロシア、「2070年までに――」というインドに、「遅すぎる！」と非難を浴びせているが、どの国も実現までの具体性が担保されているわけでもないし、大風呂敷を広げた本人達も、この先20年、30年先までその座にいる訳でもない（生きているかさえわからない）だろうから当てにならない目標の優劣を言い合っても、開票前の議席予測の優劣を争いあっているようなもので、なんともバカバカしい限りだ。（マスコミ各社の直前予測は、全社大外れだったではないか）
グラスゴーに集合した各国首脳や、ベソス氏をはじめとする大物企業家などを乗せた航空機は約400機、それ等の航空機が往復の為に排出した二酸化炭素は、10万トンに上るというから何をかいわんやである。（国連総会で演説するために欧州から航空機を使わずヨットでニューヨークに行ったという17歳のグレタさんをサポートした大勢のクルー達は、皆各地から航空機で参集したし、そもそもヨットの製作の為に様々な資源を使った、ということを指摘した意地悪なマスコミもいたが―――グレタさんも泳いでいけばよかったのに―――）
夢を追うのはよいけれど、もう少し地に足がついたものにして欲しい。
(11/04/21 10:00pm)
2021年10月29日
天国ではない
コロナで少しは減っているかもしれないが、海外に3カ月以上滞在している日本人の数は135万人程度、この30年程の間増え続けているそうだ。その内、永住権をとって海外に居を移した人を除いた、企業駐在員やその家族、留学生などの一時的に海外生活しているが、いずれ帰国するいわゆる「長期滞在者」は約90万人ほどだ。その地域別ではやはり全体の37%を占めるのは、アメリカだ。｟以下、中国（9.2％）、オーストラリア（7.2％）、タイ（5.4％）、カナダ（5.2％）、英国（4.7％）｠
秋篠宮家の長女眞子内親王は、民間人と結婚され小室眞子さんとなられたが、報道によれば近い内に、居をニューヨークに移されるとの事だから、「長期滞在者」の一員になられるようだ。
皇族という公人という立場では、何かと不自由なことも多かったが、これからは民間人、いわゆる私人となる訳で、今までは遠慮会釈なくプライバシーを追いかけまわしていた日本のマスコミの目を離れられることで、マスコミの報道などで強い複雑性PTSDを患っていると報じられている彼女の為には喜ばしいことのように思えるのだが―――。
しかし、アメリカの弁護士資格をもつ人によると、アメリカでは何よりも厚く“報道の自由”が保護されているために民間人とはいえ元プリンセスという “準公人”としての彼女には、報道の価値があり、報道の自由を盾にとった彼等によって日本以上にターゲットにされる可能性が高く、落ち着いた生活はできないかもしれないという。
マクドナルド通貨というビッグマック（世界の何処でも売っている）の価格で物価を計る指標があるが、これによると今日本で390円のビッグマックはアメリカでは644円（＄5.65）と1.65倍するし、ニューヨークでは1DKのワンルームでさえ2300ドル（320000円）、小室さんが契約したと女性週刊誌が伝える高級2LDKだと家賃は月80万円だというから、まだ弁護士資格もとっていない彼が支払い続けるのは大変だと思う。
好きな人と結ばれた彼女には末永くお幸せにと願うばかりだが、日本以上に容赦のないマスコミのターゲットにされ、物価高もさることながら、治安が悪く銃社会のアメリカでの元プリンセスの暮らしは――相当に大変だろうと思う。
タカさんも十数年アメリカ暮らしをしていたし、勿論住めば都で大好きな国ではあるが―――それほどの天国でもないことも事実だ。
(10/28/21 10:00pm)
2021年10月27日
黄葉を楽しむ
紅葉もいいがイチョウの黄葉もまた良い季節になった。各地の神社の境内、公園などでは大木と言える大イチョウが見事だが、東京では都のシンボルマークにもなっているイチョウの街路樹がいたるところで色づいていて秋の風情を醸し出している。
イチョウは雄株と雌株がある樹木としてよく知られているが、その実である銀杏（ぎんなん）は、独特の臭いが嫌がられることもあって、街路樹には、ほとんどが雄株が植えられているが、古い時代に植えられた街路樹のなかには、間違えて（？）植えられててしまったのだろうか、たまに雌株もあるようで、この時期、付近の住民の中には、せっせと銀杏拾いをしている人たちもいる。
昔は茶わん蒸しには必ず一個銀杏（ぎんなん）が入っていて、結構貴重なものだといわれていた思い出があるが、佐賀など銀杏を栽培している地方も多くあり、そこでは、一本の木から相当量の銀杏が収穫できるようだ。栽培されている銀杏は、東京の街中の物と違って落ちた銀杏を拾うのではなく、木に実っている内に収穫するという。これなら収穫の際には、まだそれほどは臭わないし、何しろ綺麗な銀杏がとれるのだとか。
ロンドンにいた時、住んでいたフィンチェリーの大きな公園にも何本ものイチョウの木があって秋を彩っていたが、あの木々は雄株だったのか、銀杏が落ちているのを見た記憶がない。
そうそう、王立植物園のキューガーデンには大きなイチョウの木があって、この木は元禄時代に日本の出島にいたオランダ人医師ケンペルが、ヨーロッパでは絶滅したと思われていたイチョウが日本には未だ生きていたことに驚き、持ち帰った銀杏から生えたものだと聞いて、親しみをもって見たことを思い出す。ケンペルよりずっと後、幕末に日本を訪れたシーボルトもイチョウの株をヨーロッパに持ち帰ったらしいが、このケンペルやシーボルトのおかげで、今やイチョウは欧米でも好まれる観賞用の樹木になっているという。
イチョウは植物の中でもその歴史は古く、3億年ほど前のペルム紀の化石からも発見されるという。その所為もあって化石にのこるイチョウの葉の気孔の数を調べることによって地球の二酸化炭素濃度の変遷を知ることができるというから地球環境の変遷を知る上では、貴重な指標化石植物といえるようだ。
それにしても我々ホモサピエンスが誕生してからせいぜい20万年だというのに、イチョウはその1500倍も古くから生きているというのだから―――植物の驚異に感嘆しつつイチョウの黄葉を楽しむことにしよう。
(10/26/21 10:00pm)
2021年10月22日
制限解除
屋形船やクルーズ船、「接待を伴う飲食店」などと同様に、コロナの感染初期に感染源のように言われたたところの中に、ライブハウスやカラオケ店など、トバッチリを受けた所も多かった。
「人が多く集まると危ない」というので、サッカーやプロ野球などのスポーツイベントも中止、延期が相次いだし、始まってもおっかなびっくりの「無観客」なんていうのも多かった。世界的にイベントであるオリンピックだってどうにかこうにか無理して開催したものの無観客で行われたのだから、いい思いをしたのはバッハ会長ぐらいなもので、菅首相に至っては首が飛んでしまった。（小池知事はまあまあ上手く逃げ切ったようだが）
やっと来月から、ディズニーランドも営業時間と入場制限の大幅緩和が図られるようだし、東京都ではコロナ対策認証店への時短営業を解除するというから、随分と久しぶりに深夜まで「接待を伴う飲食店」へ繰り出す人もいるのだろう。今月末に投開票が行われる衆議院選挙で当選した先生方もた大手を振って大挙銀座に繰り出して祝勝会をやったりするのだろうか。
山形県鶴岡市は早速、市職員に対して出していた「飲酒を伴う会食・会合」の自粛を取りやめ、一転して忘年会・新年会への「積極的参加」を呼びかける文書を発表したという。多分、この先、鶴岡市同様の通達を出す役所なども増えていくのだろう――銀座で飲んで離党を余儀なくされた先生達にしてみれば、なんとも恨みがましい気分になることだろう。
カラオケだとかコーラス、ダンスなどが趣味だという高齢者も、ここのところずっと自粛を迫られていたので、随分とストレスが溜まっていただろうが、再開と聞いてホッとしている人も多いのではないだろうか。
願わくは、年末に又、第6波だとか変異ウィルス―――なんていうことにならねばよいが―――。
(10/21/21 10:00pm)
2021年10月15日
呑める口
親から子といった具合に世代間で，形質が伝わっていくことは古代から知られていたが、その現象を研究し仕組みを解き明かしたのはベルギーの神父であったメンデルだ。彼の遺伝の法則を最初にならったのは小学校の時だったが、それ以来この分野（遺伝学）の面白さには魅了されつづけている。何せ、自分自身にそれを引き当てて、なるほど！と体感できるのだから―――。
アラブ人、アフリカ系、欧米人で酒が飲めない体質の人というのは聞いたことがないが、モンゴロイド系の中にはアルコールを受け付けない体質の人がかなりの割合でいる。（日本では約40％がアルコールに弱く、4％ほどは全く受け付けない体質だ）これは、かつてモンゴル平原に住む人の中に突然変異でADLH不活性というアルコールを分解できない体質の遺伝子が出現、その遺伝子が長い時間をかけてモンゴロイド系に広まった為だ。
タカさんの両親は、ともに呑める口だし両親の兄弟にも飲めない体質の人はいないが、妻は全くと言ってよいほど飲めないタイプであり、特に義父は全く飲めない人だった。妻が飲めない体質なのは、彼女の父の遺伝子（ADLH不活性遺伝子）を引き継いでいる所為だろう。長女は全く飲めない体質だったが、次女が呑める口なのは、こちらにはタカさんの「呑める遺伝子」が伝わったためだろう。まさに、教科書に書いてあったことを、我が家系で実感できるなんて―――ちょっとした感激がある。
呑める口であるタカさんだが、若い頃に比べると最近はめっきり酒量は落ちてきて、娘のペースには何となく叶わなくなってきているような気がする―――まあ、タカさんも七十歳を超して孔子のいうように「心の欲する所に従えども則を超えず」に至ったのだと思いたい。
(10/14/21 10:00pm)
2021年10月8日
ドボン
今月で50音別電話帳の発行と配布が終了するという。と言っても既にもう何年も前から公衆電話の激減、携帯の普及にともなって見かけることもなくなっていたし、多くの人が掲載を断るようになってその厚みも極端に薄くなってしまったが、以前は東京都の電話帳などは上下2冊、重ねるとちょっとした踏み台がわりにもなったものだった。
随分昔の話になるが職場の仲間5，6人と連れ立って、よく日本橋辺りに昼飯を食べに行き、食事の後、千疋屋などの高級フルーツ店で豪華な（昼飯代よりも高い）フルーツパフェなどを注文する―――と言う時期があった。甘党は少なく普段ならまず絶対に食べないような高いものを注文したのは、会計の前に店においてある電話帳を各自が順番に当てずっぽに引き、右上隅にある4桁のページ番号を合計して下一桁でオイチョカブのようなゲームをして一番負けたものが、全員のパフェ代を払う―――というゲームをしていたからだ。
電話帳で、自分がオイチョかカブを引けば支払い役になることはないから、店で一番高いパフェを頼んでもタダで済むわけだが―――ブタを引いたりすると自分の食べた物以外の他の同僚の頼んだパフェの代金まで支払わねばならず、若い金欠サラリーマンにとっては悲惨なことになってしまうのだった。
勿論、この電話帳ゲームの勝ち負けは、全くの運次第であり、普通に考えればいつもの5人でいけば、確率的には5回に1回しか負けないはずなのだが―――不思議なことに何回やっても当たらない人や立て続けに毎回ドボンを引いてしまう人が出て来るのが何とも不思議だった。
なんの根拠もないながら、それ以来、ツキのある人、ツキのない人、というのはある者だとおもうようになった。
あの時の電話帳ドボンだが、その内、ドボンを引いてばかりの人は、昼に誘われる前にどこかに出かけてしまうようになり、結局そのうちになんとなく雲散霧消してしまったが―――。
果たして、自分はツイているのだろうか――それともツイていない方なのだろうか―――まあ、この歳迄元気に生きてきたことからすればやはりツイている方だとは思うが。
(10/07/21 10:00pm)
2021年10月1日
敗因
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」とは名将野村監督の言葉とされるが、今回の自民党総裁選結果にも当てはまるようにも思う。
当初下馬評では必ずしも優勢とはみられていなかった岸田さんが一回目投票でも僅差とはいえ一位につけ、決選投票では圧勝と言ってよい勝ちを決めたことは、「不思議の勝ち」とも言えなくもないが、世論調査などでは圧倒的な人気を誇っていた河野さんが第一回投票でも岸田氏の後塵を拝してしまい、決選投票では大差で岸田氏に敗れたことには、マスコミが様々な敗因を語っており、結果論とはいえ、いずれも「なるほど」と納得できるものが多い。まさに「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」である。
野次馬に過ぎないタカさんだが、敗因に挙げられていたいくつかの要因の内、おもわず笑ってしまったもののなんとなく納得できるものの中に「（党員、党友間ではともかく）議員間で嫌われている石破元幹事長が支持に回ったこと」「目立ちたがりの小泉進次郎が支持に回ったこと」「選挙応援では連戦連敗だった菅首相が支持に回ったこと」という、なんとも理由にならなそうな要因があげられていたことだ。
そんな笑ってしまうような理由で何故？と考えてしまうが、考えて、見ると、議員一人一人は当然皆目立ちたがりだし（控え目な人が議員に立候補する訳がない）、まじかに控えた総選挙での政権中枢の支援が欲しいし、あわよくば新総裁の下、よりよいポジションが欲しいし―――。そうなると、余り周りの面倒見がよさそうとも思えず、「俺が、俺が」でグイグイ出てくる石破、小泉や花札でいう縁起の悪い札である「インケツ」のそしりがついて回る菅さんが応援する河野には飛びつきにくかったのではないだろうか。
そうなると消極的選択になるが、安倍前首相が嫌う石破を避け岸田、高市候補に投票しようという議員心理が起きてくるのではないだろうか。
一国一城の主でもある代議士なら、目立ちすぎる人物や、エラソーにしている人物を嫌うことや、人一倍嫉妬深いことが良く知られているだけに、今回の河野氏とその応援団の敗北は、まさに「不思議の負けなし」の典型だったのかもしれない。
コロナ対策で失敗すれば、岸田さんも菅首相の二の舞の短期首相になりかねないが、もしそんなことになった場合、今回の結果から意外と次は、高市さんという日本初の女性首相の芽もあるかも―――。
(09/30/21
10:00pm)
2021年9月17日
母集団の問題
新型コロナの累計感染者数が遂に165万人に達した。総人口が1億25百万人だから日本人の約1.3％がコロナにかかったことになる。
ちなみに感染者が一番多いのはアメリカで累計3400万人、死者数は66万5000人だ。3億3000万人いるアメリカの総人口の約10％がコロナに感染し、総人口の500人に1人が新型コロナによって死亡した計算になる。日本のコロナによる死者数は1万7千人だから、7700人に1人の割合ということになる。
こういったコロナの感染者数や死亡者数を伝える時、総数のみあるいは割合のみで比較してしまうことがあるが、かつてコロナに関して、日本のそれは米国などに比べれば「さざ波に過ぎない」と発言してマスコミの総攻撃を受けて引責辞任した内閣官房参与がいたが、彼の場合も「割合」を用いて比較したために、「人の命は地球よりも重い」という建前をとっているマスコミの恰好の餌食となったのだろう。（500人に1人が死んでいるアメリカに比べれば、7000人に1人の日本は、「さざ波」は言い過ぎにせよ、大幅に少ないことは確かだ）
連日、各都道府県ごとのコロナ感染者数が発表されているが、例えば9月15日は、東京1052人、神奈川489人、埼玉513人に対してタカさんんの住む千葉は、354人となっているから「千葉はよくやっているが、小池都知事は何をやっているのだ！」などと思いがちだが、それぞれの都県の人口が東京13.5百万、神奈川9百万、埼玉7百万、千葉6百万であることを考えれば割合的には首都圏ではいずれも大差ないということも言えるのだ。母数を知らずに数だけを比較しても余り意味がない。
自民党総裁選が17日公示、25日投開票で行われるが、この第一回投票は議員票383票、党友党員票383票の計766票で争われる。この第一回投票でいずれの候補も過半数に達しない場合は、第一回で2位までの候補で第二回決選投票が行われるが、この場合の母数は議員票383票と各都道府県1票ずつの47票の計430票で争われるというから母数が随分とちがってくるのだ。特に決選投票になった場合は、議員票の比重が極めて高くなる。
マスコミ各社が行った「首相に相応しい人」の一般人を母集団にした人気投票と、自民党所属議員たちだけで行われる、実際の総裁選の結果がまるで違ったものになるのも当然なのだ。
何事も比較をするときには、くれぐれも母集団が何か、を知っておかなければ、とんだ誤解を招きかねないということだ。
(09/16/21 10:00pm)
2021年9月10日
ヒーローインタビュー
テニスの大坂なおみ選手が、試合後の会見を拒否し、重度の欝に悩んでいたことが明らかになり一気に彼女への同情が集まったことで、勝っても負けても、あるいは棄権した場合でも要請されれば会見を受けなければ1万5000ドルもの罰金、以後の出場権を失う可能性さえあるという非情なプロテニス協会のルールに対する非難が集中した。
テニスには詳しくないのだが、長時間にも及ぶ試合中は、誰とも話すことを禁じられているそうで、そんな緊張した孤独に耐えた直後に、ぶしつけな記者たちのあらゆる質問に時間無制限で答えなければいけない―――というのだから、幼い頃からナイーブで内気だったという大坂選手にとっては、試合後のあのインタビューが耐え難い苦痛であったのだろう。
そういえば、ドジャースタジアムなどでメジャーの試合を何度も観戦したが、日本のプロ野球でおなじみの試合終了後の「放送席、放送席、それでは今日のヒーローxx選手です！」というヒーローインタビューを見たことがない。最近は大谷選手や、ダルビッシュ投手が、日本語の中継用にインタビューに応じている姿をテレビでは、何度かみているが、それ以外の選手は相変らず試合が終わったら、散らかし放題のダッグアウトを後にしてさっさとロッカールームへ引き上げて行って―――客も我先にとスタンドを後にしている。
日本のプロ野球と、アメリカのメジャーの違いはいろいろあるけれど、日本の球場では当たり前の試合後の公開インタビューと、鳴り物入りの応援（コロナ禍の今は自粛中だが）、リリーフカーに乗って登場する救援投手（アメリカでは皆自分の足で歩いて出てくる）、はメジャーにはない。
どちらが良いとは一概に言えないが、タカさんは、千葉ロッテの試合を見に行ってロッテが勝った時などは、終電の時間を気にしながらでも、お立ち台でのその日のヒーローインタビューを見るのが楽しみだ。
選手の中にはやはりシャイなタイプもいるし、受け答えも吶々としていて、「もうちょっと気の利いたことをいえばいいのに」などと、思わず指導したくなるような選手もいるが―――。
「この喜びをまず誰に伝えたいですか？」という定番の質問に、「ずっと応援してくれている両親に」などというのを聞いて、ジーンと来て「よし、これからも応援するからな！」なんて思ったりする。野球を見ている時のタカさんは単純なのだ。
(09/09/21 10:00pm)
2021年9月3日
ノンアルコール
終わりが見えないコロナによる緊急事態宣言で大きな影響を受けているの業界の一つが、飲食店業界だろう。夜8時迄という営業時間の短縮を要請され、更に酒類の提供をするな！というのだから営業が成り立つものやらと陰ながら心配になる。
随分以前の話になるが、業界誌の記者に聞いた話では、FD比率（売り上げに占めるフードと酒類の比率）は大まかに言って居酒屋のような業態で5:5、カフェバーのようなところになると約8割程度が酒類によるものだというから、これが今も変わっていないとすると店によっては全面休業した方がまだ損害が少ない―――等というところもあるのではないだろうか。
店によっては、自粛要請に応じず遅くまで酒類を提供しているところもあるというし、それを強制的に止める法的手段もない現状では、要請を守っている店から「正直者がバカを見るのか！」という罵声も飛ぶから、そんなときに首相をやっている菅さんも、支持率がガタ落ちするのも致し方あるまい。（まあ、誰がやっても支持率が落ちるのは当然で、こんな時には都知事のように、無言を貫く位の手しかないだろう）
先日、駅前のすし屋に行ったら、この店も自粛要請で酒類の提供をやめており、飲物メニューには、ノンアルコールがずらりと並んでいたが、おなじみのノンアルコールビールやら、ノンアルコール酎ハイ、ノンアルコールワインと言った物の中に、何とノンアルコール日本酒というのがあったのには驚いた。カウンター内で寿司を握っていた大将に聞いたところ、常連さんたちが少しでも売り上げに協力しようと「寿司には日本酒」だからというのでよく注文して呉れたので、今は品切れだという。
タカさんは酒飲みだからか、ノンアルのビールでさえ何だか騙されたような気がして「こんなの飲まない方がまだマシ」と思う口だけに、日本を代表する酒である日本酒をノンアルコールにしてまで飲む人がいるとは―――と唖然としてしまった。
寿司屋の大将は、お客に提供する以上は自分も試してみないとと思い、何回も試飲したそうで、香りも口当たりも、酒らしくて良いとはいっていたが―――さすがにお銚子何本もと言われれば、そんな気にはなれなかったと正直な感想を述べていた。
コロナが収束する頃には、日本の夜の風景もすっかり変わってしまっているような気もする。
(09/02/21 10:00pm)
2021年8月27日
土着民
黒澤明の名作、映画「七人の侍」は、収穫期になると野武士軍団に襲われ村を荒らしまくられる農民たちが、乏しい糧の中からねん出した食料で、七人の侍たちを雇って野武士軍団と戦ってもらおうとするというストーリだった。七人の侍たちと野武士軍団は、激闘の末に野武士軍団は壊滅、侍たちも4人が倒れるが村は救われる―――というストリーだったが、最後の場面で、田植えを祝う村人たちを見ながら生き残った三人の侍の一人（確か志村喬が演じていた）がつぶやく名ぜりふが「今度も負け戦だったなぁ、勝ったのは百姓たちだ」だった。戦いにかったのは、乱世の中で、生きるために盗賊へと身を落とした野武士たちでもなく、負け戦で主を失くし白米を腹一杯食べられるという条件で村人に雇われた浪人たちでもなく、苦しい生活を強いられ虐げられる農民たちだった―――という志村喬の侍の述懐は、結局最後に勝ち残るのは、その土地に土着している者たちだ―――と教えているのだ。
歴史上、数々の地が侵略によって蹂躙されてきたが、侵略者たちでその後、かつての土着民を蹴散らして、その地で栄え、今も続いているという民族は、きわめて少ない。（アメリカインディアンを蹴散らして今も栄えているアメリカなどの例はあるものの――この先は分からない）
侵略者を追い出せるかどうかは、基本的にはその地に住んでいる民族の土着力の強さ如何ではないだろうか。
アレクサンダー大王の時代から、モンゴル帝国、大英帝国やソ連、ベトナムにおけるアメリカのように、いかに一時の軍事力が優れていようとも、その地に雑草のように根を張る土着民を駆逐することはできない。
日本もかつて外地へと進出をはかったことがあるが、どれ一つとして今も残っているところはなく、せいぜい今も日系人が多く残っているところは、その地の土着民に同化し今や日本人とはかけ離れた民族となっている人たちだけだ。
一帯一路構想の下、世界中にその支配を及ぼそうとしている習近平帝国だが、新疆ウィグル地区でさえあれだけ過酷な弾圧を進めながらも、長い目でみて彼の地の民族をその軍門に完全に下らせることは、できないと思うし、いかに貧しいからといって一部の支配層の顔を札びらではたいたとしても、アジアやアフリカの国々の土着の人々を子々孫々に至るまでその支配下に置くことはできないのではと思う。
(08/26/21 10:00pm)
2021年8月20日
死にゃあしない
政府は、新型コロナウイルスの感染状況を評価するための指標を見直す検討に入ったという。長引く緊急事態宣言をできるだけ早く解除し、経済活動再開するための「出口戦略」の策定につなげたいという動機に基づくものだという。
多くの業種ではズルズルと延ばされる緊急事態宣言の期限に対する悲鳴が上がっているという現状を考えれば、政府としてはどうにかして事態を打開したいという意向は分からないではないが、当初掲げていた「国民の命が大切」という建前が消え、何とかして「命より経済」に話を持って行こうとしているかのように思える。
というのも、政府は18日の記者会見で現在の、緊急事態宣言の基準となる5つの指標（医療の 逼迫ひっぱく具合や新規感染者数、感染経路不明割合などの５つ）を見直し、「ワクチン接種の状況や重症者数など」を重視する方向に変えていこうと検討しているという。
確かにワクチン接種率は今後上がっていくだろうし（数学的にも、今後既接種者数（接種を済ませた人の累計）が減っていくということはない）、「重症者」の基準も既に見直されているし（意識不明で集中治療室に入っている状態でなければ重症とはみなされない）、中等症２というのでさえ（血中酸素93％以下、酸素投与が必要な患者）というなんとも患者にとっては厳しい基準なのに、これをさらに「ワクチンを投与しているか」などという指標で絞ろうというのは、やはりこれは「緊急事態宣言を何が何でも解除する為」の新基準ではないかと疑ってしまう。
うがった見方をすれば、政府が言いたいのは「コロナにかかっても、死ななければいいじゃないか」ということなのかではないかだろうか。
5月末の調査ではコロナ感染者では、発症から約2か月たっても呼吸苦、倦怠感といった後遺症が認められた人の割合が5割近くになっているという。デルタ株が優勢になっている現在ではこの後遺症の割合はもっと上がっている可能性もある。
確かに、余程の場合でないと「死にゃあしない」かもしれないが、コロナに一旦感染すれば、長い期間、後遺症に苦しむことになるというのだから、政府がいくら甘い事を言おうが（ワクチン接種が済んだとしても）不要不急の外出を控え、三密を避け、コロナにかからないように細心の注意を払うに越したことはないようだ。
(08/19/21 10:00pm)
2021年8月16日
因果律と予定説と量子論
タカさんにとって量子論がお手上げなのは、古典力学の基礎理論からかけ離れているからだ。
例えば「光子」は「波と粒子の性質をあわせもつ」「複数の場所に同時に存在する」という理論があって、その理論を証明する実験（ヤングの干渉実験等）を見せられ、現代の半導体技術などがこの量子論に基づいていることを知っていても、尚、疑心暗鬼のところがあるのはタカさんの世の中の理解の基礎に「原因があるから結果がある」という因果律の考え方が染みついていてその方が、心地よいからではないかと思う。
カソリックの考え方は、「神が喜ぶことをすれば天国へ行ける」という因果律が成り立っている（らしい）。
妻以外の女性との関係が奔放であっても「日曜日に教会にいって神父さんに懺悔すれば罪は許されるから問題ない」なんていう罪深きカソリック信者がいる――なんていう話を聞いたことがあるが、プロテスタントの場合、懺悔という制度はないから大変だ！と言うが本当だろうか。
それは、プロテスタントの起源が、当時のローマ教会が売り出した、これを買いさえすれば一切の罪は許され死後天国へ行ける―――という免罪符（贖宥状）を、「それはおかしい」とルターやカルヴァンが反対したことから始まり、それが現在のプロテスタントの起源だという。これは、物事は全て神があらかじめ決めており、どれだけ善行を積んでも、神が最初から地獄行と決めた人間は、地獄へ行く――という因果律とは正反対の「決定論」を教義としているからだという。（こちらも詳しい訳ではないが）
大方の仏教宗派も、基本的には因果律で「生きている時に、善い行いをしておれば極楽往生ができる」とされているから、お布施を行ったりするなどの善行を積んでおけば、免罪符を得たような効果があることになるのだが、その点、プロテスタントは、いくら寄付や施しをしたところでその人が死んでから天国に行くか地獄へいくかは神が事前に（生まれる前から）決めているというのだから－--、信者は気の休まることがないのではないかと思うが――。
量子論も予定説も、なんともややこしい。
(08/15/21 10:00pm)
2021年8月13日
科学と宗教
近代科学の父ニュートンが構築した古典物理学の基礎であるニュートン力学は、3つの基本原則からできているが、その第一原則は、等速直線運動に関するもので「質点は、力が作用しない限り、静止または等速直線運動する」というものだ。かいつまんでいえば外部からの力（例えば空気抵抗とか摩擦といった力）が加わらない限り静止しているものは静止し続けるし、運動しているものは等速直線運動を続けるということだ。
宇宙における物体の動きを知っている現代人にとっては、至極納得のいく原理だが、この力学原則も、「なぜそうなのだろう？」という疑問を持つ者は多いのではないだろうか。
そこでよく使われるのが、宗教では「神がそう決めたから」という説明が行われる。「神が―――」といわれると、ニュートン以前の人々の多くは勿論、今でも宗教を信じる人は「なるほど！」と納得し、それ以上の疑問を抱くことはない。神の存在は、ある意味、非常に便利なのだ。
ニュートン自身、万有引力の法則をはじめ様々な科学的真理を明らかにした近代科学の父ともいえる存在だが、「真理の大海は、すべてが未発見のまま、人の目の前に広がっている」という言葉をのこしているように、やはり人類がいかに自然の謎を探求したところで、どうしても知りえないことの方が大海のように広がっており、この余りにも不思議に満ちた世界を司っているのは「万能の神」しかない！と考えていたのだ。
いまや、科学と宗教は別のものだという考えが支配的だが、ニュートンやアインシュタインといった科学者の多くは、熱心なキリスト教信者だったしそのことに彼等は矛盾を感じてはいなかった。現代でも、科学者の多くが神の存在を信じているか、「神がいるか、いないかは分からない」と答える「不可知論者」であり、神の存在をきっぱり否定した著名な科学者といえば、近代でもキュリー 夫人や、チューリング、最近ではホーキングなどに過ぎないという。
「神が人間を創ったのではない、人間が神を創ったのだ」という名言を残したのは哲学者フォイエルバッハだが、彼の無神論に強い影響を受けたマルクスとエンゲルスの思想から始まった共産主義は、今や中国では形を変えて一つの宗教のようになり習近平という絶対的存在を崇めるようになっているのも随分皮肉な話だ。
(08/12/21 10:00pm)
2021年8月6日
変な声
長い自民党の歴史の中で、現職が総裁選に立候補しながら敗れたというのは、1993年の（現職首相でもあった）の福田赳夫ただ一人である。（形勢悪化と判断し、出馬を断念した現職総裁は、3人程いるが）
福田赳夫の場合、それより2年程に大平派（バックに田中派がいた）との間で二年後には政権の座を大平に譲る、といういわゆる「大福密約」を結んでいたが、首相としての実績を着実に上げていたという自負もあり、総裁選では楽勝できると考え密約を反故にして再選に立候補したのだったが、これに怒った大平・田中連合が、党員投票での大がかりな集票作戦を行ったこともあって、予備選で大敗し本選への出馬を断念せざるを得なかったのだ。
福田は以前、総裁選で田中角栄に敗れた際に「やがて天が福田を必要とするときがくる」といってその後、実際に総理の座を射止めたことがあったが、本選辞退に追い込まれた際に記者たちに「天の声にも変な声もたまにはあるなぁ」という名言を残している。
9月に予定される自民党総裁選には、今のところどんな顔ぶれが出て来るのかはっきりしないが、コロナ対応でしどろもどろ、五輪強行では世論の袋叩き感は強い物の、現職の菅総理が「出馬は当然」と意欲を見せていて、その後ろ盾の二階幹事長は、対抗馬出馬を許さないというにらみを利かせながら「菅総理の無投票再選」を画策しているからやはり大本命ということなのだろう。総理になりたいという野望を持つ先生は多い偽よ、立候補して二階氏ににらまれたら――とビビっている連中ばかりとなると―――よほどのはねっ返りでもなければ、記念立候補はなさそうだし―――。
まあ、いずれにせよ総裁選は自民党というクローズドサーキットでの出来事だから―――国民の9割以上には関係のないは話ではあるのだが―――「変な声」があったら面白そうなのに―――。
(08/05/21
10:00pm)
2021年8月3日
がっかりスポット
東京タワーが完成したのはタカさんが小学5年の時で、それからかれこれ60年程の人生の大半を東京で過ごしてきたにもかかわらず、まだ一度ものぼったことがない。
エッフェル塔やトロントのCNタワー、今はなきニューヨークのWTCビルや、上海タワー、台湾の台北101などには上った経験があるのと比べると、東京タワーはおろかスカイツリーに上ったことがないというのは単に「いつだって行ける」という思いがあるからなのかもしれない。
観光名所と言われるところは、どこもそんなものかもしれない。関西人なら皆、通天閣に上ったことがあると思っていたら、関西育ちの知人の多くは近寄ったこともない、と意外な反応だったのに驚いた。「いつでも行ける」という思いが、結局一度も行かない、ということになってしまうのは、多分タカさんの東京タワーと同じなのではないだろうか。
世界には名所と言われるスポットが多いが、勿論、感動を味わった名所も多いが、逆に「がっかりスポット」と言われる所も多い。
ブリュッセルの小便小僧、コペンハーゲンの人魚姫、シンガポールのマーライオンや、シドニーのオペラハウスなどは、がっかりスポットとして「有名」だが、そうなると「確かにがっかりスポットだ！」とこの目で確かめたくなるという真理も働いて、「有名がっかりスポット」として観光客が絶えない――等という変な現象もおきているとか。（たしかに、ブリュッセルはいい街だが、あの小さな小便小僧の像は、近所の石材屋に何体か並んでいる像と変わりはないから、「確かに、がっかりした！」ということを確認すれば、それで満足だった。
コロナ禍で海外旅行は控えざるを得ないし、年齢の所為でそうそう遠い所にでかける体力や気力が衰えているように思うが、できれば訪ねてみたいと思っている所はまだまだある。それは、いずれも「まだ一度もいったことのないスポット」であるというのも、がっかりスポットの反対に、現実を知らない故に起きる心理からかもしれない。
タカさんにとってはそんな憧れのスポットは、タンザニアの「セレンゲティ―国立公園」や、カンボジアのアンコールワット遺跡、イタリアのポンペイ遺跡といったところだが、行った事があるという人に聞くと、「案外がっかりする！」と言う人が多いのは、やはり彼の地もがっかりスポットの要素を含んでいるのだろうか？
(08/02/21 10:00pm)
2021年7月30日
付和雷同
国民が一致して「鬼畜米英」「撃ちてし止まん」の声をあげていた日本が、敗戦になるや今度は「マッカーサー万歳」に掌返しして恥じなかったことは、山本七平をはじめ多くの人が繰り返し述べているが、東京五輪開会式直前まで7割、8割の世論が「中止、もしくは延期」といっていながら開会し競技がはじまるやいなや新聞やテレビを筆頭にメディアも日本選手の活躍をこれでもかこれでもかと報じ、五輪中継の視聴率は軒並み上がっていて開会式に至ってはなんと56％を記録したというから、世論の掌返しという日本人のメンタリティーは、75年がたっても何の変りもないということなのだろう。
方やアメリカでは、ワクチン接種拒否は個人の自由だと主張する、保守系といわれる共和党支持者たちが、ワクチン接種をすればコロナ感染リスクを大幅に減らせるというエビデンスが各地から集まっているというのに頑としてワクチン接種を拒否していて、共和党支持層が多いといわれる州では、相変わらずコロナ感染爆発が続いている。
命のリスクを賭けてでも自分の考えは変えないという-――頑固とも、バカともいえるアメリカ人とコロコロと考えを変えても、変えたことさえ忘れてしまう日本人の違いはなんといってよいやら―――。
それは日本人の国民性（民族性？）には多分に付和雷同的な部分（今流にかっこよくいえば、ポピュリズム的性向）があるからではないか――と思う。
東京での感染者数がオリパラが閉会する8月中に、5千人とか1万人というレベルにまで増えると（8割おじさんと言われる京大の西浦教授のシミュレーション）また世論は掌返しをして政府バッシングが始まるだろう―――その頃にはバッハ会長もとっくにスイスに帰っていて知らんぷりをするだろうしなぁ―――。
（07/29/21 10:00pm）
2021年7月16日
50代問題
タカさんの住んでいる市での高齢者（65歳以上）と基礎疾患のある人のワクチン接種は、二回目接種だと50%、一回目だと80%が終えたという。そんな所為もあるからだろうか、タカさんと同世代もしくは年長の人の多い御近所では、こころなしかコロナに対する恐怖心は薄らできているようにも感じられる。
全国的にも市町村による濃淡はあるにせよ、この傾向はひろがっているようで、毎日発表されるコロナ重症者数に於ける60代以上の占める割合が、1月のほぼ80%、5月の65%に比べると、直近では50%と大きく減ってきている。それに代わって増えてきているのが50代で、1月には10%だったものが直近では30%と急激に増えている。マスコミでは、これを「50代問題」と言っているようだ。
50代といえば、糖尿病や高血圧といった疾患が増えてくる年代だが、社会的にも「働き盛り」、家庭的にも今倒れられては一番困る―――という年代だ―――。（重ねて言うが、他の年代は、さして重要ではない、という意味では決してないが）
飛行機に乗ると、酸素マスクの使い方のデモがあるが、その時に必ず言われるのが、子供がいる場合、まず大人が酸素マスクをつけてから、子供につけてあげるようにするように―――と言うことだ。保護者が酸欠で気を失ってしまっては、子供も共倒れになってしまうからということなのだが―――。
ワクチン接種でも50代あるいはそれより若い世代がいつまでも後回しにされると社会が成り立たなくなってしまう可能性があり、その社会的な打撃は大きい。
戦争や臓器移植の場合には、（冷酷なようだが）「助ける順番」をつけなければいけない場合がある。（参照：「命の優先順位」02/28/11）ワクチン接種は、わが市でも、今週から、順次60歳代、50歳代へと移っていく予定だというが、勿論、その年代よりも若い世代がいつまでも後回しになっては大変だ。
政府には全力を挙げて全世代でのワクチン接種を一刻も早く進めて欲しいものだ。この問題は与野党でお互いを非難しあっている場合ではないし、まして金目当てのオリンピック利権の世話を焼いている場合ではないと思う。
(07/16/21 10:00pm)
2021年7月9日
今年の梅雨は
天気予報でよく聞く「平年に比べて」と言う時の「平年並み」とは現在のところ1980年から2010年までの30年間の平均値だという。
気温だとか雨量の記憶なんて、自分が思い浮かべるのはせいぜい直近の2-3年位のものにすぎず（あるいは、逆に「小学生の頃は、もっと雨が多かったような気がする―――」などといった、今から半世紀以上前のおぼろげな記憶になってしまい）、「1980年から2010年までの30年間の平均値」などという、一番実感と遠い（中途半端な）数値と比較されても、どうもピンと来ないという面はある。
確か、3か月ほど前の今年の梅雨入り、梅雨明け予測は、「平年より遅く、夏の暑さも平年より高い｝と言っていたように思うが―――今のところ「当たった」といえるのだろうか―――。
線状降水帯による大雨被害や土砂崩れのニュースが連日続く割に、今のところタカさんの応援している千葉ロッテのZOZOマリーンでの試合は、ほとんど中止になっていないことからすると、タカさんとしては今年の梅雨が平年に比べて早いのか遅いのか、あるいは雨量が多いのか少ないのかさえどうもピンと来ない。
小学生の頃は歩いて片道一時間位はかかる学校へ、連日長靴に雨合羽という重装備に傘をさしてぐしょぐしょに濡れながら通ったような記憶があるが、今朝我が家の前を通った小学生で、雨合羽に長靴等というスタイルはおらず、ビニールカバーをかけたランドセルを背負って黄色の雨傘という、軽快ないでたちがせいぜいだった。
考えてみると、今時の都会の公立小学校で片道40分も50分もかかるところはないのではないだろうか。それにプロ野球の球場も今や、ほとんどがドーム球場になっており千葉ロッテや楽天のファンの様に、球場に出かける前に雨を心配する必要もなくなっている。
たしか、長期予報によると今年の梅雨明けも、例年より遅くなるということだったが、そうなると東京オリンピックもまだ梅雨の最中ということになるのだろうか――。暑い盛りの開催になると予想して、マラソンなどは札幌に移したが、結局、そんな必要もなかった―――ということになるのだろうか。昔から、本当に天気の予測というのは、当たらないと考えた方がよさそうだ。
（07/08/21 10:00pm S.T. ）
2021年7月2日
時のたつのは
4コマ漫画の「コボちゃん」でコボちゃんのおじいちゃんが今年も早くも半年が経過、「年を取ると時のたつのが早く感じる」とつぶやくが、友人との電話ではワクチン接種の2回目が待ち遠しい！」と話しているのを聞いたコボちゃんが「ワクチンは別ものなんだ」とつぶやく―――というのがあったが一日、一月、一年の経過をあっという間に感じてしまうようになっているタカさんもコボちゃんのおじいちゃんにいたく同感してしまった。
コロナで自粛気味の生活を長く続けていると、人と会うとか、出かける、といったイベントが乏しいだけに毎日が変化なく過ぎてしまい、いや本当にこの頃は、時の経つのが早い。火木土の朝のゴミ出しだとか、暇つぶしに見る、野球や大相撲の中継がない日が続くと、曜日の感覚が鈍くなってくるような気さえして認知症になりはしないかと、恐怖心にかられてしまう。早くコロナ前の日々に戻って欲しいものだ。
「年を取ると時のたつのが早い」というのは何もコボちゃんのおじいちゃんに限らず古来より年寄りの多くが実感して来たことのようだ。
アインシュタイン理論によれば、時間の長さは、移動速度によって違ってくるということらしいが、勿論、我々人類が同じ地球の表面に張り付いて暮らしている限り、物理的には、その絶対値は同じであり年齢によって早さを違って感じるのは、あくまでも感覚的なものだ。
なぜ人は時間の経過を若さによって異なって感じるのか―――については、色々な説があげられている。以前、「チコちゃんに叱られる」では、子供にとっては生活のあらゆる面で（例えば一食ごとの食事でも）トキメキを感じ過ぎた時間を長かったと感じるが、大人は生活の一場面、一場面にもはやトキメキを感じなくなっているから、過ぎた時間を短いと感じる―――といっていたし、別の説では残された寿命が短い大人は、死がどんどん近づいているように感じ、子供は「まだまだ先の事」と感じるから時間の過ぎ方を違って感じるのだという説もあった。
2回目接種を待ち望むコボちゃんのおじいちゃんならまだしも、１回目接種さえまだで、イライラして待つ全人口の8割の人達にとっては政府のモタモタさ加減には相当腹がたっているのではないだろうか。
（07/01/21 10:00pm
S.T. ）
2021年7月1日
野生との共生
NHKスペシャルの「ワイルド東京」という番組で、線路を獣道にして夜な夜な食べ物を探して歩き回るタヌキの姿を映していたが、臆病なタヌキは別に人を襲うわけでもないから、その親子の姿には、ちょっとほほえましささえ感じた。
タカさんの住んでいる町にも、タヌキに良く似たハクビシンが出没、これは住宅の屋根裏に棲みついて糞をするので、異臭が漂い場合によっては壁や天井をリフォームしなければならなくなるというから、棲みつかれたら業者に駆除してもらう必要があるのだとか。
タヌキやハクビシンといった野生生物と人間の棲み分けの境界線が最近一時期にくらべて近くなってきているような気がする。今年に入ってからでも、札幌の郊外の住宅地にヒグマが現れた、あるいは神戸や京都ではツキノワグマがでてきたというし、日本各地では、我が物顔に住宅の軒先を歩き回り、農作物や果樹をあさるニホンザルのニュースなどもよく見かけるようになった。
夜のシンガポールを歩き回り、豚を襲うマレー虎とか、中国雲南省では大移動する象の群れ―――等というニュースもあったから、それに比べればハクビシンで大騒ぎしている我が町は、まだマシな方かもしれないが―――犬でさえ苦手なタカさんにとっては、想像もできない野生化（？）が進んでいるようにも思える。
欧米の都市ではよく公園などでリスを見かけるが、日本からの観光客はリスを見ると喜んでスナック菓子などを与えようとするが、欧米人は、リスは狂犬病菌をもっている場合があるからと、近づかないしちょっと怖がってもいるようだ。日本人とのリスにたいするイメージの差は大きい。
そうそうロスにいた時に家の庭にちょくちょくスカンクの親子が現れることがあった。ディズニーのアニメに出てくるようにその様子は中々愛くるしいものだったが、勿論、スカンクをびっくりさせて一発やられたら大変なことになるので、庭のガラス戸をしめ切って、家の中で息をひそめていたものだったが―――。
最近はペットとしてアニメニシキヘビだとかワニやオオトカゲを飼っている人がいるらしく、それが逃げ出して騒ぎになるケースもあった―――怖がりのタカさんにとっては、なんとも、想像のつかない趣味である。
（06/30/21 9:00pm S.T. ）
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